【調査研究】営業職が優秀だと感じる営業担当者とは?

【要約】

 営業職が優秀だと感じる営業担当者の特徴についてWebでのアンケート調査を行った。アンケートの回答数は138名で営業職が51名、営業職ではないが、営業を兼務している(社長が営業を行っている等)が35名、営業職以外で、営業を兼務していないが52名であった。

 営業職と営業兼務を加えた86名の解析においては、「聴き上手/質問上手で顧客の話をたくさん聴いている」の回答が最も多く、選択率は75.6%であった。次いで、「仕事が早く、スピーディーに対応してくれる」が69.8%、「よく気が利き、顧客への配慮が上手にできる」が57.0%、「「製品知識や関連知識が豊富で質問にも的確に回答してくれる」が52.3%という結果であった。

 この結果より、営業職が優秀だと感じる営業担当者の特徴は、「聴き上手/質問上手で顧客の話をたくさん聴いている」、「仕事が早く、スピーディーに対応してくれる」、「よく気が利き、顧客への配慮が上手にできる」、「製品知識や関連知識が豊富で質問にも的確に回答してくれる」であることが分かった。また、これらの特徴は、全体や非営業職の回答を見ても、ほぼ同様の結果であった。


【調査目的】

「営業職が優秀だと感じる営業担当者」とはどのような営業担当者だろうか。また、営業職と非営業職との間で「優秀だと感じる営業担当者」に認識のギャップがあるのだろうか。これらを調べるべくアンケート調査を行った。


【調査方法】

 調査方法はWebでのアンケートで行い、調査期間は2025年4月25日~5月9日の15日間で行った。


【調査内容】

アンケートの調査項目は全部で4項目設定した。

調査項目1

調査項目2

調査項目3


調査項目4


【アンケート結果】

調査項目1の結果

 当アンケートへの回答者数は138名であった。回答者の属性は、①営業職が51名、②営業職ではないが、営業を兼務している(社長が営業を行っている等、以降、営業兼務と記載)が35名、③営業職以外で営業を兼務していない(以降、非営業職と記載)が52名であった。また、①の営業職と②の営業兼務を合算すると、86名となる。


調査項目2の結果

<全体での結果>

 当調査全体では、「聴き上手/質問上手で顧客の話をたくさん聴いている」の回答が最も多く、全体の71.7%を占めていた。2番目に多かった回答は、「仕事が早く、スピーディーに対応してくれる」であり、選択率は69.6%であった。その後、「よく気が利き、顧客への配慮が上手にできる」が61.6%、「製品知識や関連知識が豊富で質問にも的確に回答してくれる」が58.7%、「謙虚で誠実な人柄」が39.1%と続く。

 また、その他として自由記載欄を設定していたが、その他については16の回答があった。その他の内容に関しては、「顧客ニーズ(潜在・顕在)や課題の発掘力・把握力が高く、それに対する提案力が高い」といった分類の回答が9つあった。「顧客ニーズ(潜在・顕在)や課題の発掘力・把握力が高く、それに対する提案力が高い」といった項目については設問の選択肢にはしていなかったが、選択肢として設定していた場合、多くの方が選択される可能性が高いのではないかと推察される。尚、「顧客ニーズ(潜在・顕在)や課題の発掘力・把握力が高く、それに対する提案力が高い」に分類されるその他回答を記述したのは、営業兼務3名と非営業職6名であった。


<営業職+営業兼務での結果>

当調査には営業職51名と営業兼務35名が回答しており、両者を合算した86名での解析を行った。ここでは上位6項目が全体(138名)での解析結果と一致した。


<非営業職での結果>

 非営業職52名の回答結果については、「よく気が利き、顧客への配慮が上手にできる」、「仕事が早く、スピーディーに対応してくれる」、「製品知識や関連知識が豊富で質問にも的確に回答してくれる」の3項目が同率の69.2%で1位となった。全体解析や営業職(兼務含む)でも最も多かった「聴き上手/質問上手で顧客の話をたくさん聴いている」は僅差の65.4%で4位であった。その後、「謙虚で誠実な人柄」が40.4%と続く。


<営業職単独での結果>

<営業兼務での結果>

<各属性における選択順位のまとめ>


調査項目3の結果

 営業先が企業・事業者(B to B)の営業職(兼務含む)は、75名、営業先が最終消費者(B to C)である営業職(兼務含む)は3名、B to BとB to Cの両方が13名、よく分からないが2名であった。当設問は営業職・営業兼務を対象に行ったものであるが、非営業職7名からも回答があった。回答者の傾向としては、B to Bの営業担当者が大半を占めていた。B to BとB to Cとでの認識の違いを解析することも考えていたが、B to Cのサンプル数が少ないため、今回は営業先別の解析は行っていない。


調査項目4の結果

 当項目については自由記載欄として設定していたが、76名の方から回答の記載があった。回答者の職種の内訳は、営業職41名、営業兼務33名、非営業職2名である。自由記載のため回答内容は多様であったが、営業職(兼務含む)が開発したい能力、あるいは必要としている支援として多かったものは上記の通りであった。

 当項目では、コミュニケーション能力の強化が最も多く12名であった。傾聴力や質問力の回答も多かったが、これらもコミュニケーション能力の一端であり、それも含めて考えると、営業職にとってコミュニケーション能力強化のニーズが特に高いと考えられる。また、顧客ニーズや課題の把握においても質問力の貢献は大きいと考えらる。


【考察】

 設問4の開発したい能力/必要としている支援において、コミュニケーション能力を挙げる回答が多かった。コミュニケーション能力を単純に分解すると、「話す力」と「聴く力」に分類することが出来る。設問2の「優秀だと感じる営業担当者」の特徴については、「聴き上手/質問上手で顧客の話をたくさん聴いている」という「聴く力」の項目が最上位となっている。一方で、「話題が豊富で話が面白い」、「資料作成やプレゼンが上手で分かりやすい」、「押しが強く、購入/採用を明確に依頼している」という「話す力」についてはいずれも上位にランキングしていないというのが特徴的である。これは営業職でも非営業職でも同様の結果であり、「面白い話をしてくれる人」よりも「面白い話を聴いてくれる人」の方が優秀な営業担当者ということなのだろう。これは、「面白い話を聴いてくれる人」の方が、顧客から好かれやすく、顧客ニーズや顧客の課題の把握にも到達しやすい為だろう。

 設問2において、「仕事が早く、スピーディーに対応してくれる」が2番目に多く選択された。迅速な対応は時間的価値を提供しており、顧客に実利を提供しているとも言える。また顧客は「自身が大事にされている」とも感じ、自尊心が満たされると共に相手への好感や信頼感にも繋がっていくものと考えられる。「よく気が利き、顧客への配慮が上手にできる」についても、顧客の自尊心を満たし、好感や信頼感に繋がるのだろう。「製品知識や関連知識が豊富で質問にも的確に回答してくれる」や「謙虚で誠実な人柄」についても顧客からの信頼感を意味していると考えると、「顧客からの信頼を得ている」というのが軒並み上位を占めていると言える。そしてこれらの「顧客からの信頼を得る力」というのは、「話す力」よりも上位にあることを調査結果は示唆しているのだろう。


【結論】

 当アンケート調査から分かった「営業職が優秀だと感じる営業担当者」の特徴は、「聴き上手/質問上手で顧客の話をたくさん聴いている」、「仕事が早く、スピーディーに対応してくれる」、「よく気が利き、顧客への配慮が上手にできる」、「製品知識や関連知識が豊富で質問にも的確に回答してくれる」である。優秀な営業担当者は、①傾聴力・質問力を駆使して顧客との関係性構築と顧客ニーズの収集を行い、②迅速な対応や顧客への配慮、確実な情報提供や人柄を通じて顧客からの信頼を得ている。そしてこれらは、プレゼン力や話術を磨くことよりもより重要であるということを示唆しているものと考察する。

以上

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