【現場に学ぶ】燕三条「工場の祭典2025」見学レポート③
1. 燕三条が持つ「ものづくりの厚み」
燕三条地域で毎年開催される「工場の祭典」。ものづくりの現場を間近で見られるこのイベントは、製造業に携わる者にとって学びの宝庫です。今回は、有限会社 一成モールドさんを見学し、プラスチック製品用の金型製造の現場を体感しました。普段は目にすることのない「製品を生み出すための裏方」の世界に、終始魅了されました。
2. 金型製造の奥深さに迫る
金型って普通に生活していると滅多に耳にしない言葉ですよね。金型とは、プラスチックや金属などを成形する際に使用する「型」のことです。金型に、溶けたプラスチックを流し込み、冷却して固める「鋳型」として使用されます。この金型を使用することで、同一規格のプラスチック製品を量産することが出来るようになります。
一成モールドでは、家電部品や工業用部品など、精密なプラスチック製品を成形するための金型を製作しており、1ミリ以下の精度が求められる工程が続きます。見学してまず驚いたのは、成形されるプラスチック製品に比べて金型がずっと大きいということ。例えば手のひらサイズの樹脂パーツを作るための金型が、まるで電子レンジほどのサイズもあることも。これは、成形時に高圧で樹脂を流し込むための構造や、冷却のための水路、位置決め用のピンなど、多くの機構を内蔵しているためだそうです。外から見れば単なる「鉄の塊」ですが、中はまさに精密機械の集合体でした。
また、見学を通して、金型づくりの「頭脳」とも言えるCAD/CAM設計の重要性と大変さも強く印象に残りました。金型設計は、単に製品の形状を反転させるだけではありません。成形時のプラスチックの収縮率、流動性、製品を型から取り出すための抜き勾配(傾斜)、さらには金型内部の冷却回路の設計まで、ありとあらゆる要素を計算に入れなければならない極めて高度な作業です。特に、設計データがそのまま後工程の機械加工(CAM)に直結するため、設計段階でのわずかなミスも許されません。まさに他工程に大きな影響を与える、責任重大なプロセスだと感じました。見学の際には、なんと89工程にも渡るCAD/CAMの入力工程表を見せて頂きました。優秀な加工機についつい目が行きがちですが、それを支える頭脳に感嘆しました。
3.金型作成の「緻密な」プロセス
一成モールド様で特に詳しく説明いただいた、金型作成の主要な工程を簡単にご紹介します。
①設計(CAD): 製品データをもとに、成形条件などを考慮しながら、金型全体の構造と、プラスチック製品の形となるキャビティ(凹部)とコア(凸部)の設計を行います。
②加工データ作成(CAM): 設計されたCADデータをもとに、切削工具の動き(パス)を決定し、NC(数値制御)工作機械で加工するためのプログラムを作成します。ここで、工具の選定や切削条件が、仕上がりの精度と時間に大きく影響します。
③精密加工: 作成されたCAMデータに基づき、大型のマシニングセンタやNCフライス盤などを用いて、鉄の塊である金型材を削り出していきます。ここでの精度が、製品の品質を決定づけます。
④放電加工: 切削では難しい深い溝や鋭い角など、非常に複雑で微細な形状を加工するために、電気エネルギーを利用した放電加工機が使われます。これもまた、ミクロン単位の精度が求められる作業です。
⑤仕上げ・研磨: 機械加工では避けられない微細な工具痕やざらつきを、職人の手によって磨き上げ、プラスチック製品の表面品質を決めます。
⑥組み付け・トライ: 全ての部品が揃ったら、熟練工の手で金型が組み上げられます。その後、実際に成形機に取り付けて**試作(トライ)**を行い、設計通りに製品ができるかを確認し、必要に応じて微調整が加えられます。
このような気の遠くなるような緻密な工程を経て、ようやく一つの金型が完成するのです。
表舞台に出ることの少ない「金型」という世界。しかし、そこには日本のものづくりの本質が凝縮されている――そんなことを実感できた一日でした。
#工場の祭典
#一成モールド
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